発達障害児療育センター
![]() 神経構成理論は、脳神経外科医のテンプル・フェイ博士を中心に理学療法士のG・ドーマン博士と教育学者のC・デ ラカート博士たちによって提唱された理論です。 日本では、ドーマン法だけが良くも悪くも有名ですが、リハビリ学会ではデラカート博士の業績は非常に高く評価され ています。特に、学習障害のために書かれた「読めない子どもの出発」(風媒社発行、小笠原平八郎訳)と自閉症児の ための「さいはての異邦人」(風媒社発行、阿部秀雄訳)などの著書は有名です。 一般に言われている理学療法・言語療法・作業療法は脳からの運動系の療法であり、神経構成理論では、運動系に 加えて脳への感覚系の調整が必要であると言っています。感覚統合で有名なエアーズ博士は、特に前庭(バランス)感 覚と触覚へのアプローチを勧めています。 また、ウィング博士たちの研究により自閉症を含む広汎性発達障害やADHDに感覚の過敏性を指摘しています。デ ラカート博士は、それらの行動障害を引き起こす原因を感覚障害と位置づけて診断と治療法を開発しました。感覚の 過敏な神経は過敏さが平静に保てるように、感覚の鈍い神経には適度な刺激にも反応できるように、感覚が混乱して いる神経には刺激がどこから来ているかを意識させることによって、脳が刺激に正しく反応し、環境に適応できるように なるというものです。 社会福祉法人白百合学園障害児療教育研究班(現発達障害児療育センターしらゆり)は1981年より業務提携し、こ のデラカート博士ならびにマコーミック氏に直接来神していただき、治療と実践をしてきました。 さらに最新の発達障害研究で指摘されている脳の脆弱性と可塑性に対処するため運動療法と食事療法も早くからプ ログラムに取り入れ、児童へのコーチングと保護者へのペアレント・トレーニングを実施してまいりました。 検査の手順 @ 児童記録の分析 デラカート研究所の児童記録を模した児童記録を分析することにより、発達障害を持つ子どもの感覚障害を知ること ができます。神経構成検査によって、より詳しくその状況を確認することができます。 A 保護者による津守式発達質問紙 発達障害を持つ子どもは、環境が変わると普段できていることができないことも多い、たった半日の検査で診断する ことは危険です。保護者に普段の様子を質問紙に答えていただくことで、他の検査との整合性を計ります。 B 知能検査など 児童の状況に応じて、できればWISC−Vを実施します。実施が難しい場合は、ビネー検査・K式検査を実施しま す。こども家庭センターなどの他の機関で直近に検査を実施している時は省略することができます。 C 神経構成検査 神経構成理論に基づく検査です。視覚・聴覚・触覚・味覚・臭覚のとくに原始的な刺激に対する反応を検査します。運 動・言語・手の使い方の成熟度を検査します。それらを表とグラフに表すことによってプログラムを作成することができ ます。(一時保護児童もしくは施設措置児童においては、こども家庭センター担当立ち会いのもと施したい。) D その他の検査 必要に応じて学力検査、概念形成検査、S−M社会生活能力検査、その他心理検査を実施します。検査は必ずいく つかの検査とバッテリーを組むことによってより正しい分析を行うことができます。 プログラムの概要 1.運動のプログラム 1) 神経構成検査によって確認された充分機能していない脳機能の部位に働きかけるための運動を行う 2) 脳に十分な酸素を供給するために心肺機能を高めるために運動を行う 3) 運動を通して、達成感・満足感と協調性を学ぶ 2.感覚のプログラム 1) 過敏な神経には、穏やかな刺激から順に強い刺激へと刺激を拒否せず受け止められるようにする 2) 鈍い神経は、強い刺激から始め、弱い刺激でも反応できるようにする 3) 混乱している刺激は、刺激がどこから来ているかを意識させて、刺激に正しく反応できるようにする 3.生活のプログラム 睡眠・食事・生活習慣など基本的なものを身につける 4.概念形成のプログラム 小学校就学までに家庭でごく自然に身につけている知識を意図的計画的に学ぶ 5.学習のプログラム 年齢に応じて、必要な学習をする 6.社会性のプログラム 社会生活スキルを身につける 7.コーチング 児童に対して、人生の目的、生きる意味、当面の目標などをコーチングする 8.ペアレント・トレーニング 保護者に対して、子どもに対しての効果的なほめ方、注意の仕方、話の聴き方などを身につけるトレーニングを支援 する NPOしらゆりの指導を受けるには (1) 検査の申込み まず,NPOしらゆりにお電話下さい。勿論,お手紙でも結構です。「児童記録」を郵送させていただきます。「児童記 録」にご記入の上,ご返送下さい。 (2) 児童記録 児童記録をご記入いただくことで,お子様のご様子を知ることができます。「児童記録」ご返送後,こちらより改めて検 査の日程のご案内をさせていただきます。 (3) 検査と説明 検査は,午前10時より午後3時までの半日を要します。児童記録の確認と3つの検査を実施いたします。 (4) プログラムの申し込み 検査の説明を受け,プログラムを希望されるご家族は,お申し込みいただきます。 (5) プログラムの説明 プログラムは,感覚を調整する訓練,脳を活性化させるための運動の訓練,知的な発達,社会的な発達を促す為の 訓練,身体的・生理的な諸条件をより良い状態にするための生活上の注意事項などで構成されています。 (6) 訓練の報告と新しい課題 原則として毎月1回家庭でされているプログラムの進展状況を報告に来ていただきます。訓練の報告を受け,必要で あれば新しいプログラムへの変更があります。 随時電話相談をお受けいたします。 (7) 再検査と説明 新規プログラムを始められて1ヵ年が経過しますと,再検査を実施いたします。1年前との検査を比較し,グラフにし てご説明させていただきます。 (8) それまでにしておくこと ぜひ,以下の本を読まれることをお勧めいたします。 小笠原平八郎著「障害児が生まれたら」・「誤りなき選択」(サイマル出版会)
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しらゆり
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